尿漏れに鍼と漢方

みなさんこんにちは。
大雨で大変なことが起こりましたね…。
地震も多いですし、いつどこで何があるかわからない時代になってしまいました。
毎日暮らせることが当たり前ではないんだなとつくづく思い知らされます。
一日も早い復興と亡くなられた方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

 

今日は犬の尿漏れについてです。
尿漏れは様々な原因で起こります。 加齢によるものだったり、ホルモン(内分泌)の変化によるものだったりします。
時々経験するのがメスの避妊手術後の尿漏れです。
寝ているときにいつの間にかということもありますし、起きていても知らずに漏れていることがあります。
避妊手術後におこる尿漏れはホルモンのバランスが変わることによっておこることが可能性としてありますが、原因がはっきりわからないことが多いです。
手術がうまくいかなかったということでは決してなく、いつもいつも起こるものでもないですし、手術前にはどうしても予見できないものなのです。
さてどうするか。
従来ホルモン剤などが試されることが多く、最近では海外のお薬での治療がされています。
そのほかの治療として鍼と漢方薬も効果があるようです。もちろん治療との相性や状態によっても変わるので完璧とは言えませんが、様々な子を治療させていただくうちに思った以上に効果があり、これといった副作用も出ないというのが今のところの実感です。

それにしても、尿漏れに鍼と漢方??? ほんとに??? と思われそうですね。 それが案外そうでもないんです。 尿漏れは「腎」の「気」が落ちることで起こるといわれています。 この状態を「腎気虚」といいます。「腎気」は膀胱にしっかり尿をためたり、筋肉を引き締めたりして尿を出したり止めたりするエネルギーになります。 これが足りなくなると尿が異常にたまったり、思わぬところで漏れてしまったり、ということが起こります。 本人は気づいていないことが多いです。 飼い主さんにとっては布団などがぬれたりして、結構苦労されている方が多いと思います。

さて、今日ご紹介の子はO市はなちゃん、パピヨンさん。

立派な耳と舌ですね~。本当に蝶々のよう。
はなちゃんは事情があって今の飼い主さんの元へ来ました。そして健康と思われるので避妊手術をしてもらいました。その後、とても元気なのですが、なぜか寝ているときに尿がじわじわと出てくるようになったそうです。
診察してみますと、元気食欲OKで、普段の排泄も問題なし。 脈は「やや沈虚(やや沈んで弱い感じ)ですが、舌はどちらかというと「紅」です。お話をたくさん伺って、「腎気虚」または生い立ちや今までの生活を考えて「腎精虚」と考えました。腎気虚は前にも出てきましたが、腎精虚は初めてです。生まれ持ったエネルギーあるいは食べ物によって得られるエネルギーを「精」といいます。そこから「気」が生まれるのですが、親から受け継いだものが少なかったり、過剰な交配などでエネルギーを消費してしまうと「精虚」という状態になりやすくなります。
はなちゃんは鍼と漢方薬で、まず腎気虚の治療からしてみることにしました。 腎気虚と腎精虚の経穴(ツボ)は使うところが似ています。 そこに数本置き鍼する「白鍼」をしました。そして腎気虚のための漢方薬を使用してみました。


うん、りりしいです(笑)

2週間に1回の鍼治療と、漢方薬を毎日飲んでいただいていました。
そして、数回目の治療のころ目に見える効果が出てきました。だんだんおもらしの回数が減り、それが週1回になり、月1回になり…。だんだん減ってきて、本人はずっといたって元気なのですが何より飼い主さんのお掃除の負担が減ったのは何よりうれしいことでした。
今は2か月に1回の鍼治療とごく少量の漢方薬で治療していますが、とても良い経過をたどっていて、間もなく漢方薬も終了でよいかなと考えています。鍼治療は本人さえ嫌がらなければ数か月に1回程度したらどうかと思っています。

動物ってかわいいですよね。
自分が迎え入れた子ならなおさら。本人は元気だし、ご飯も食べてくれる。だけどなんとなく続く症状に悩んでいる飼い主さんはとても多いと思うのです。 例えば一晩中続く咳とか…。 我が家もそうでした。

鍼と漢方薬は明らかに治せないものがあったり、急性症状にはなかなか一般診療の中では対応しにくいこともあるのですが、しかし逆に、慢性で「ちょっと大変…」という症状を軽くして動物や飼い主さんの生活をよりよくすることができるかもしれないのは大きな魅力です。

もしなんとなく困っていることがあったらなんでも相談してくださいね。